兼六園

　１６７６（延宝４）年、５代綱紀が造園した蓮池庭（れんちてい）が始まりとされ、１８２２（文政５）年、松平定信により「兼六園」の扁額をもらう。国指定特別名勝。指定面積１０万７４０平方メートル。
　兼六園は、江戸時代の代表的な築山・林泉・回遊式庭園であり、水戸の偕楽園、岡山の後楽園とともに、日本の三名園と称されている。
　兼六園の作庭は綱紀から１３代斉泰まで２００年の歳月がかかっており、さらに明治以降の公園としての利用形態を経て現在の形となっている。当初から計画的に作庭されたものではないが、城や町の防備のために引いた辰巳用水を曲水とし、都市の中の緑地としての役割を担いながら、優れた伝統的日本庭園であるところに大きな特徴がある。
　兼六園の始まりは、蓮池庭といわれた瓢池（ひさごいけ）周辺で、この付近は金沢御坊のあった頃から低湿地であり、蓮（はす）が茂っていたので蓮池の名があった。金沢城となってからここに蓮池堀とよばれた堀を造り、この堀に接したところに池泉のある庭があり、その庭を蓮池庭と呼んだといわれる。
　綱紀は、蓮池御亭（おちん）と呼ばれる別荘を建て、藩主の別荘としての兼六園の利用が始まった。１１代治脩（はるなが）は、宝暦の大火（１７５９年）により、御亭などが焼失し荒廃していた蓮池庭を、１７７４（安永３）年に復興し、翠滝（みどりだき）と滝見亭（夕顔亭）を作った。この作庭により瓢池から常盤ケ岡（ときわがおか）あたりが現在みる形となった。
　兼六園の名は、１８２２（文政５）年、１２代斉広（なりなが）から頼まれた松平定信が「洛陽名園記」にいう宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望の六勝を兼ねるという意から命名した。
　その後、斉泰は、竹沢御殿を縮小し、成巽閣の建築などに転用した後、千歳台に曲水を廻し、霞ケ池の拡張などの工事を行い、明治維新を間近にした１８５１（嘉永４）年に庭園が完成した。
　明治維新の版籍奉還にあたり兼六園は国有地となり、１８７３（明治６）年に石川県が管理する公園となった。
　兼六園作庭の大きな特徴に、辰巳用水と自然主義がある。代々の藩主が長い年月をかけて折々に作庭をしながら、庭全体を統一感のあるものとしているのが、辰巳用水を利用した遣水（やりみず）である。
　辰巳用水の水は池、流れ、噴水や滝となって、園内の隅々まで多様で劇的な景観を作りだしている。さらにこの水は、隣接する成巽閣庭園や西田家庭園にも流れている。
　現在、園内にはたくさんの名木がある。根上がりの松、唐崎の松などマツ類が多く、それを彩るように兼六園菊桜、ソメイヨシノなどが配置され、春には花見の名所となっている。また、アカマツ、タブの大木が茂り、ヒサカキ、ツバキなどの中低木が一体となって森林を構成したところもあり、自然状態に近い景観も楽しむことができる。兼六園は、四季折々の美しさを楽しめる庭園として、国内外を問わず多くの観光客に親しまれている。