用語集


世界遺産
 1972年に第17回ユネスコ(国連教育科学文化機関)総会で採択され、1975年発効の「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(通称:世界遺産条約)」に基づき、世界遺産リストに掲載(登録)される「顕著な普遍的価値を有する有形の文化遺産や自然遺産」である。リスト掲載の決定機関は世界遺産委員会。事務局はユネスコ世界遺産センター。日本は1992年に世界遺産条約を批准し、125番目の締約国となった。
 世界遺産条約の目的は「顕著な普遍的価値を有する有形の文化遺産や自然遺産を人類共通の遺産としてとらえ、国際的に保護・保全し、未来に伝えていくこと」である。

世界遺産の種類
 文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種類があり、世界遺産リストの中で、保護・保全や未来に伝えていくことが特に危機的状況にある物件が「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)」に登録される。
 「城下町金沢」「霊峰白山」が目指しているのは文化遺産である。文化遺産は顕著な普遍的価値を有する記念工作物、建造物群、遺跡、文化的景観。自然遺産は鑑賞上、学術上、保存上、顕著な普遍的価値を有する地形や生物、景色などを含む地域。複合遺産は文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えている遺産。
 2009年10月現在、登録件数は世界遺産リスト890件(文化遺産689件、自然遺産176件、複合遺産25件)。うち危機遺産リスト31件。

世界遺産登録の意義
 世界遺産に登録されることは、遺産の内容が、他に類例がない固有のものであり、国際的に「顕著で普遍的な価値」があると認められたことになる。その国の、関連地域の人々の誇りとなる文化、自然遺産を内外にアピールできるということは、単に観光振興にとどまらない意義を有することになる。登録された遺産を持つ国は、それを恒久的に保存していく義務を課せられることになる。そのことは、住民にとって、ふるさとの文化、自然遺産を見直し、保存管理のあり方を総点検する機会となる意味をも持っている。

日本の世界遺産2014年3月現在
文化遺産
  • 法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)
  • 姫路城(兵庫県)
  • 古都京都の文化財(京都府、滋賀県)
  • 白川郷・五箇山の合掌造り集落(岐阜県、富山県)
  • 原爆ドーム(広島県)
  • 厳島神社(広島県)
  • 古都奈良の文化財(奈良県)
  • 日光の社寺(栃木県)
  • 琉球王国のグスク及び関連遺産群(沖縄県)
  • 紀伊山地の霊場と参詣道(三重県、奈良県、和歌山県)
  • 石見銀山遺跡とその文化的景観(島根県)
  • 平泉‐仏国土を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群(岩手県)
  • 富士山‐信仰の対象と芸術の源泉(静岡県、山梨県)
自然遺産
  • 白神山地(青森県、秋田県)
  • 屋久島(鹿児島県)
  • 知床(北海道)
  • 小笠原諸島(東京都)

世界遺産登録(世界遺産リスト掲載)への道筋
  • 世界遺産条約締約国の政府が、国内の世界遺産暫定一覧表(暫定リスト)記載の候補の中から、条件のそろった物件を、締約国21カ国で構成された世界遺産委員会(政府間委員会)に推薦する。
  • 世界遺産委員会の依頼で、文化遺産候補はICOMOS(国際記念物遺跡会議)、自然遺産候補はIUCN(国際自然保護連合)が専門的な評価調査を行う。
  • 両機関の評価調査報告を受け、毎年1回開かれる世界遺産委員会が、世界遺産登録の可否を決定する。

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世界遺産委員会
 世界遺産条約で設置が定められている。締結国の中から、均等に代表されるように選ばれた21カ国で構成されており、主に「世界遺産リスト」と「危機遺産リスト」の作成、遺産の保全状態のモニター、世界遺産基金の効果的な運用の検討などを行う。

世界遺産暫定一覧表
 世界遺産条約締約国が、5年〜10年以内に世界遺産に登録するため、推薦しようとする物件を記した国内の候補地リスト。世界遺産委員会に正式に推薦する前に、その概要をあらかじめ届け出ることになっており、世界遺産に登録されるためには、まず、各国の世界遺産暫定一覧表に記載されることが必要になる。

ICOMOS(国際記念物遺跡会議、イコモス)
 遺跡や建造物などの保護を目的とする非政府組織(NGO)。世界遺産では、世界遺産委員会の諮問機関として、文化遺産候補の評価調査を行う。各国から推薦された物件の登録の可否を検討し、勧告として答申。勧告は @登録 A情報照会 B登録延期 C不登録―の4種類。世界遺産委員会はこれを参考にして正式決定する。

世界遺産の「評価基準」
 世界遺産として登録されるには、「顕著な普遍的価値」を持っていることが必要で、その「ものさし」になっているのが「評価基準」(登録価値基準)である。世界遺産委員会の定める「世界遺産条約履行のための作業指針」に、以下のように(@)〜(I)の10種類の評価基準が規定されており、世界遺産になるにはいずれか1つ以上にあてはまる必要がある。

  • (@) 人間の創造的才能を表す傑作である。
  • (A) 建築、化学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流またはある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
  • (B) 現存するか消滅しているにかかわらず、ある文化的伝統または文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも稀有な存在)である。
  • (C) 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
  • (D) あるひとつの文化(又は複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態もしくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本ある。または、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である。(特に付加逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)
  • (E) 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
  • (F) 最上級の自然現象、または、たぐいまれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
  • (G) 生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的または自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
  • (H) 陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程または生物学的過程を代表する顕著な見本である。
  • (I) 学術上または保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅の恐れのある種の生息地など、生物多様性の生息域保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。
  • (※仮名違いなど一部変更)

コアゾーン(核心地域)
 世界遺産の資産の本体となる区域で、厳格に保全・保護が義務づけられている場所を指す。

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バッファゾーン(緩衝地帯)
 コアゾーンの保護のために、周囲に設けられる利用制限区域を指す。推薦される資産を保護するため、その周辺に設けなければならない。

文化的景観
 文化遺産の一つで、自然と人間の営みによって形成された景観。庭園や田園風景、信仰の対象となった自然景観などで、そこに映し出される歴史的、文化的価値の全てを遺産として評価する考え方。「人と自然の共同作品」とも呼ばれる。

保存管理計画
 世界遺産登録推薦資産の現在および将来にわたる効果的な保護を担保するために、各資産について、資産の顕著な普遍的価値をどのように保全すべきかを明示した適切な管理計画のことで、提案の際に策定しなければならない。

日本の世界遺産暫定リスト
文化遺産
  • 古都鎌倉の寺院・神社ほか(神奈川県)
  • 彦根城(滋賀県)
  • 富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県)
  • 長崎の教会群とキリスト教関連遺産(長崎県)
  • 飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群(奈良県)
  • 国立西洋美術館本館(東京都)
  • 北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道、青森県、秋田県、岩手県)
  • 明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域
    (福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、山口県、岩手県、静岡県)
  • 宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県)
  • 百舌鳥・古市古墳群(大阪府)
  • 金を中心とする佐渡鉱山の遺産群(新潟県)


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